人がある行動を起こすには、必ずその行動を起こすための原因があります。周りの環境がそうさせる、と言う側面もありますが、必ずその人の心にも原因があります。
当ブログ「ココロノネット」では、そんな心の動きや心の世界を分析し、明らかにしていきたいと思っています。
今回は、映画「男はつらいよ」の主人公である”寅さん”を分析してみたいと思います。考えたいテーマは、「なぜ寅さんはフラれ続けるのか?」です。
いつもフラれている寅さん
映画「男はつらいよ」シリーズと言えば、1人の俳優が演じた最も長い映画シリーズとしてギネス認定されている、日本を代表する映画シリーズです。
「男はつらいよ」の主人公、車寅次郎はフーテン暮らしで年中旅をしています。そして旅先で、あるいは故郷の葛飾柴又で出会う美人の「マドンナ」に恋をする、というストーリーが定番になっています。
※映画「男はつらいよ」シリーズについて書いた記事は、こちらもご覧ください。
冗談ばかり言いながらも、心に寄り添うように優しく接する寅さんに、マドンナは良い印象を持つことがほとんどです。
しかし、いつも恋愛に発展することなく、失恋するか身を引く形で終わってしまいます。
一方的にフラれるばかりではないのですが、なぜ寅さんは恋愛が成就しないのでしょうか?
架空の物語なので、結末はいつも”フラれる”ことにはできますが、寅さんの設定を紐解くと、「恋愛が成就しない」何らかの原因があるはずです。
心理学的に考えると、その原因は、その人の心を形成しているものにありそうです。
心を形成するもの、とはその人の考え方や性格であり、家族環境や(特に幼い頃に)経験したこと、なども含まれます。
ここから、寅さんの性格・特徴や生い立ち、家族状況などから、なぜ寅さんがフラれ続けるのか、見立ててみたいと思います。
寅さんに関する情報
寅さんがフラれ続ける理由を考えるために、寅さんの性格・特徴、生い立ち、家族状況についてまとめていきます。
あくまで設定されているものに限り、筆者が推測した内容はここには含まれていません。
寅さんの性格・特徴
・快活で明朗:人を笑わせるのが好きで、寅さんの周りにはいつも人が集まっています。テキヤをやっていることもあって、口が達者で、でたらめな話もよくします。
・人情に厚い:旅先でも家族のことを思い、見ず知らずの人の話にも耳を傾けます。テキヤ仲間の義理も果たそうとする場面もみられます。
・感情的になりやすい:上機嫌かと思うと、ちょっとした一言で急に起こり始めることもあります。美女には惚れっぽく、それが原因で家族と喧嘩をすることもしばしばです。
・男として、渡世人としての美学がある:男は引き際が肝心、などこだわりを持っています。こだわりが強いがために、幸せを掴み損ねている部分もあります。
寅さんの生い立ち
寅次郎は「とらや」の5代目主人、車平造と芸者の菊との間に生まれた子どもです。妹のさくらとは母が異なり、秀才の兄がいましたが、早くに亡くなっています。
寅次郎は、幼い頃に平造から殴られるなど、暴力を振るわれていました。一方のさくらの実母は、寅次郎にも優しく接していたと言われます。
中学時代には、校長に「芸者の息子だから教育がなっていない」と言われ、校長を殴って退学になったエピソードを自ら語っています。
そして、14歳で父と喧嘩になり、家を飛び出し、それきり戻りませんでした。
寅次郎は放浪の末、テキヤとなって全国各地の祭りでおもちゃを売ったり、占いをしたりして暮らすようになりました。
寅さんの家族状況
寅さんの家族や取り巻く人々について紹介します。
・さくら:寅次郎とは母が異なり、寅次郎が家出した後は両親と兄が亡くなり、叔父の竜造夫婦に育てられます。一流企業のOLとして働き、上流階級の御曹司と見合いをしますが、寅次郎が同席したことで破談になります。とらやの裏の印刷工場で働く諏訪博と結婚し、満男を生みます。
・竜造(おいちゃん):車平造亡き後は、とらやを継いで寅次郎とさくらの親代わりをしています。寅次郎のことを気遣いながらも、寅次郎の心ない発言に対しては厳しく叱る場面もあります。
・つね(おばちゃん):感情豊かで涙もろく、寅次郎やさくらを我が子のように大切にしています。
・博:さくらの夫で、裏の印刷工場の工員をしています。博の父は大学教授ですが、父と喧嘩して家出をしています。博識で知的な発言が多く、寅次郎と喧嘩になることもあります。
・満男:寅次郎の甥にあたります。思春期には博とさくらに反発することが多く、浪人中に高校の後輩の及川泉に恋をします。寅次郎には心を開いており、人生について尋ねる場面もあります。
・お菊:寅次郎の実母で元芸者です。京都で連れ込みホテルを経営しており、苦労してきたせいか、寅次郎に対しても厳しく接してしまいます。しかし、喧嘩しながらも仲良く歩く場面もあります。
寅さんがフラれ続ける原因についての分析
これまでまとめた寅さんの性格や生い立ち、家族状況などから、筆者が独自に分析をしてみました。
恋愛への一歩を踏み出すことができない寅さん
恋愛がうまくいかない、ということは寅さんには恋愛のセンスがないのでしょうか?
それは違うと考えています。
寅さんの特徴の1つには、自分の恋愛はうまくいかないのに、他人の恋愛のコーチはとても上手である、ということがあります。さくらと博を始め、劇中では多くのカップルを成立させてきたものの、自分のことになると途端にうまくいきません。
つまり、寅さんは恋愛のセンスがないわけではないということです。ただ、自分が恋愛に一歩を踏み出すことが苦手なのです。
恋愛に足を踏み出すその勇気が、なぜ寅さんにはないのか考えてみましょう。
寅さんがフラれる典型的なパターンがあります。それは周りの誰かが、マドンナに対して、寅さんがマドンナに惚れている、と話してしまうことから始まります。
典型的には、第38作『男はつらいよ 知床慕情』では、北海道で知り合った仲間から「りん子(竹下景子)に惚れているんだろう」と言う言葉をかけられ、寅次郎は東京に戻ってしまいます。
それまでは”恋愛”が表に出る関係ではなく、寅さんとマドンナは仲の良い友達に近い関係でした。それが、”男と女”の関係の色を帯びてくると、寅さんは逃げ出してしまうのです。
この行動の背景にはどんな思いがあるのでしょうか?
1つは「こんな自分とあの人が本気で付き合ってはいけない」という信念があります。寅さんはテキヤと言うアウトサイダー的な生き方をすることに、堅気の人とは一線を引いています。
もう1つは、実は自信があまりない、という側面もあるのではないかと推測します。快活な寅さんと、”自信がない”という性格は結びつかないようにも思えますが、実は生い立ちから分析すると寅さんの別の一面が見えてきます。
不遇な環境で育ったゆえの心の傷
一見すると平和なとらやで仲良く過ごす寅さんを見ていると忘れそうになることですが、寅さんはかなり不遇な環境で育った点を押さえておく必要があります。
出自の負い目、殴るなどの暴力的なしつけ、周囲からの差別的な扱い、中学時代に親元からの家出など、成長の過程でネガティブな要素がたくさんあります。
何をやっても「お前は芸者の子だ」と言われ続けることは、「自分はダメな存在だ」と知らず知らずのうちに植え付けられていきます。
実際に第15作『寅次郎相合い傘』でも、リリーが結婚しても良いと言われても、「俺みてえなバカとくっついて幸せになれるわけがねえだろ」と自分を卑下してしまうのです。
リリーを気遣う寅さん、という捉え方もできるのですが、自分を大事にすることができない寅さんの特徴が出ているシーンとも言えます。自分を認められないために、相手の愛情も受け止められないという結末になってしまうのです。
また寅さんの明るい性格は、恋愛においては”両刃の剣”として機能しているように思われます。
良い側面として、マドンナと接する最初の段階ではかなり強みとなっています。緊張して話せない男性からすれば、手に入れたい能力とも言えます。
また寅さんの「快活さ」や「人情に厚い」部分は、育ってきた中でポジティブな影響を受けた部分だと思います。
さくらや、さくらの実母の優しさ、竜造夫婦の温かさなど、寅さんを囲む人たちに大切にされた経験は、良い影響を与えています。
しかし別の見方をすれば、世知辛い世の中を生き抜くための術だったと言えるかもしれません。
冗談を言っていないと、自分のつらい過去を思い出してしまう、という側面があり得るのではないでしょうか。
さらに言えば、この”明るさ”もかえって恋愛を遠ざけてしまっているかもしれません。
明るく振る舞うことで自分を守るのだとすれば、かえってそれは本心を見せないのであり、弱さを見せられないと言うことも意味します。
まとめ – 寅さんの魅力と心の傷
「寅さんがフラれ続ける理由は何か?」という問いについて掘り下げてみました。
寅さんの生い立ちによる、自信のなさが影響しているのではないかと考えました。
その一方で、寅さんの最も魅力的な部分は何でしょうか?
それは、理屈ではなく、相手のことを純粋に思う一心で行動することです。
”常識的な”人であれば、先にあれこれ考えてしまうことでも、心に火がつくとすぐに行動に出ます。
その真っすぐな心は男女問わず、多くの人の心を動かしてきましたし、寅さんが愛される理由でしょう。
その偽りのない心の一方で、実はどこかで不遇な過去に蓋をしてしまっているようにも思えます。それゆえ、自分で主体的に未来を切り開く、という自信に欠けてしまっているのではないでしょうか。
恋愛の成就においては、自分の弱さも含め相手にさらけ出さなければなりません。弱さをさらして生きることができなかった、過去の課題が残り続けた結果のようにも思えます。
「男はつらいよ」シリーズは、寅さんの面白可笑しい部分が魅力ではありますが、過去を掘り下げれば、寅さんの心の傷が時々姿を現していることがわかります。
幸いに、とらやの人々を始め、温かい環境で生きている寅さんなので、より不遇な環境ににあるマドンナと出会うと、何とかしたいと思うのでしょう。
しかし寅さん自身も自分の未解決な課題があり、学歴や財産のない寅さんは、気持ちばかりになってしまいます。
寅さんの心に動かされた人が、マドンナを救うような物語もあるので、寅さんの強みは”人を巻き込む力”とも言えるでしょう。
しかし”自分自身が幸せになる”ということが、どうしてもできないゆえに、結婚することができないのかもしれません。
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